給料をもらう仕事と、自分で稼ぐ仕事は違うのだと知る。

この住み込みでの目標金額は、貯金と合わせて50万円の資金を得ることにした。

「50万円あればなんとかなる」

ここを出た後、その資金が尽きる前までに、PC一台で稼ぐ力を身につける予定だった。

ここに来るまで、貯金は10万円ちょっとしかなかったが、1ヶ月間フルで働き、無駄遣いをしなければ、月に20万近く稼ぐことができることを知った。

まる2ヶ月働けば50万円まで増やせる。

僕は、派遣期間を延長せず、

夏の終わりの8月31日で仕事を区切ることを決めた。

目次

仕事に慣れることの、不安感。

仕事にも慣れ、短いシフトであれば、ふくらはぎも足裏もまるで痛くならなくなった。

最初は九州男児に怯え、仕事の勝手がわからず右往左往するだけだった僕は、お客さんの誘導を率先してやるようになったり、厨房の先輩にご飯をご馳走になったり、自分の仕事に自信をつけ、自分の居場所を作れるようになっていた。

逆に、ここを出てしまった後のこと怖くなってくる。

時給もなければシフトもない。

生活費が稼げるようになる保証も当然ない。

注意してくれる先輩も、気軽に話せる友達もいなくなる。

二十四時間、すべての時間を自分で管理する必要があり、またあの生ぬるく怠惰な泥沼の生活に戻ってしまう可能性もあった。

今、こうして仕事に慣れ始めてきたからこそ、その後の生活が逆に怖くなった。

部屋に寝転がって、ただ漠然と天井を眺めて暮らし、不安や恐怖にただただ怯えて暮らしていた自分。

医者に頭を下げながら、逃げるように日本を車で旅していたあの頃の自分と比べれば、今の自分はよほどたくましくなったと思う。

ただその強さが、自分が本来身につけたかった強さと結びついているのかと聞かれれば、いまいち自信を持つことができなかった。

給料をもらう仕事と、自分で稼ぐ仕事は違うのだ

給料をもらってお金を貰う仕事と、自分がゼロからお金を稼ぐ仕事。世の中には二つの仕事の種類があるのだと思う。

そして、いくら給料をもらってお金を貯めることができても、

組織や社会の中でうまくやっていく力をつけても、

自分でゼロから稼ぐ力は身につかない。

それを手に入れるためには別の努力が必要で、その力を手に入れない限り、本当の意味で自由になることはできないのだと思う。

部屋に戻ると、ネットにつながらないPCと向き合った。

そこで、これから作る予定のサイトについてイメージしたり、どういったサイトをつくるかというメモを取ったり、以前作ったサイトは何が悪くて収益があがらなかったかを考えた。

PC一台で仕事をしながら旅をしている自分の姿を思い浮かべようとする。だがそのイメージは、今の自分とくらべて、あまりにも遠い。その遠くかすむイメージを、僕は引き寄せなければならないのだ。

 

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