4月15日:あいりん地区からの卒業

荷造りは、瞬く間に済んだ。

バックパックにパソコンと、机代わりにしていた本を詰めて、服と洗面用具類をまとめれば、それで終わり。

8ヶ月間暮らしていたとは思えないくらい、荷物は少なかった。

よく、晴れていた。

最上階にある僕の部屋は、廊下から屋上にのぼることができた。屋上からあいりんの街並みと、通天閣を眺めていると、これまでのことが鮮明に思い浮かんできた。

この8ヶ月間で、僕は変わることができたのだろうか。

8ヶ月前よりも体重が5キロ減った。人付き合いが苦手な性格もそのまま、相変わらず友達もいない。むしろ、引きこもっていたせいで余計にひどくなった気がする。

しかし、ここにきた初日。この屋上で同じ景色を見下ろしたとき。僕はここ以外で生きる力もなければ、ここですら生活を成り立たせられるかわからなかった。

今の僕は、ここででも、他の場所ででも、生きることができる力をつけた。

もちろん、今の稼ぎでは行動範囲は限られるけれど、余裕がなかろうがなんだろうが、今、僕にはそこで生き抜くための力があり、そこで生きるための武器をもっている。その違いは、天と地ほどの差に思えた。

これから僕は世界に出る。

そして仕事を続けて、今の何倍も稼ぐ力を身につける。

そうしたら、お洒落をしたり、友達や恋人をつくる余裕もでてくるだろう。そのうちに性格も明るくなるかもしれない。その、ひとつひとつの力を、一歩一歩、進んで身につけていけばいいのだ。僕がこのあいりん地区で、ひとりでも生きる力を身に着けたように。

まずは実家の千葉へ。そういえばここに来る前、僕は鬱病で実家のベッドで伏せっていたのだった。もうそれは、遠い過去の、前世のようにも感じた。

しばらくは千葉で目を治し、僕がこのあいりん地区で学んできたことを、それを求めている人に伝え、そして、

出国します。

阪口ユウキ

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