久しぶりのmacのキーボードタッチが、あまりに柔らかくて泣きそうになる。
なんだろう、比喩を思い浮かべようとして、もはやそんな柔らかい言葉が出てこないだろう、実益に塗れた思考にちょっと嫌気がさした。
おそらく今月の収益は5万円を達成するだろう。
そして翌月は、今月よりももっと稼げるようになるに違いない。僕は確実に成長している。
今から2ヶ月前の日記を読み返せばそれはすぐにわかる。今の僕にとっては「そんなこと」でも、その当時の僕にとっては、頭を悩ませ、追い詰めるすべてのものであった。
それはきっと、このPCは僕にとって、仕事をするためのものではなく、文章を書くためのPCだからだと思う。
そんな風にPCに向かったのは、前に日記を書いた2ヶ月前から、一瞬たりともなかったことなんだ。
遠くで救急車のサイレンの音が鳴り響いている。
幹線道路を走る車の駆動音がにぶく響いている。
北東を向いた小窓は開け放たれているが、見えない空気圧に阻まれているかのように、11月の冷えた風は不思議なほど部屋の中に入ってこない。
柔軟剤のやさしいいい匂いが部屋に漂っている。
この3畳の独房のような部屋で、僕は生まれてはじめて自由を獲得した。
自分の人生と、生活にまつわる全てを、自分の責任下においてコントロールすること。
他の誰にも支配されることなく、自分の想いだけを追求して日が暮れて行く充実感。
今僕の生活の全ては、僕の肉体と頭が稼ぎ出している実感は、なかなか誇らしいものだと思う。