フランスで家を借りる方法|家族向けの部屋探し・契約・注意点
フランスで家族の住まいを探すとき、最初はどうしても家賃を見比べたくなります。けれど実際に暮らし始めると、日々の満足度を左右するのは家賃の額ではなく、「学校やスーパー、薬局、マーケットが徒歩圏にあるか」「車なしで生活が回るか」のほうだと感じる場面が多くなります。
この記事は、数年単位でフランスに長期滞在・教育移住する家族に向けて、家探しの全体を「探す前に決めること」「物件を探す」「契約する」「入居する」「住み始めてから」という時間の流れに沿って整理したものです。
内容の大半は一般化できる情報で、ところどころにわが家がエクス=アン=プロヴァンスで実際に経験したことを、判断材料として短く添えています。
ひとつ前提として、フランスの賃貸は日本と仕組みが違う部分が多く、日本と同じ感覚で進めると戸惑いやすいことを知っておいてください。契約期間も敷金も保証人も保険も、地域や物件、オーナーによって扱いが変わります。ここで紹介する内容は出発点として読み、最終的には最新情報と現地の不動産会社で確認しましょう。
ステップ1|物件を探す前に決めること
家探しは、物件サイトを開く前の「どこに、どんな部屋を探すか」を決める段階で半分が決まります。ここを飛ばすと、後から後悔しやすくなります。
住むエリアと生活動線を先に決める
まず住みたい地区と生活動線を決めます。
学校、買い物、薬局、交通、治安を地図の上で具体的にイメージし、車なしで暮らしが成り立つかを考えておくと、このあと物件を絞り込みやすくなります。家賃の数字から入るのではなく、「ここで暮らしたら一日がどう回るか」から考えるのがコツです。
学校は「住所が決まってから」決まる
ここは順序を間違えやすいところです。フランスの公立小学校は、住所が決まると、その住所を管轄する市役所がどの学校に通うかを割り当てる仕組みです。つまり「狙った学校に合わせて住所を逆算する」のではなく、「住所を決める、すると管轄校に振り分けられる」という流れになります。
ですから家族がやるべきなのは、特定の学校を狙うことではなく、住みたいエリアに公立校が複数あり通学が成り立つかを地図で確認しておくことです。
受入状況は学校側の事情にも左右されるため、住む前に入学校を確定させることは通常できません。わが家もエクスの旧市街に住所を決めたあと、市役所のオンライン手続きで書類を登録し、近隣校の受入状況を踏まえて入学校が案内されました。住所が起点で、学校は後から決まる、という順序でした。
家具付きか家具なしかを選ぶ
次に、物件タイプを決めます。
移住したばかりの家族は、家具や家電をゼロから揃える時間も余裕もないことが多いため、家具付きで即入居するケースが目立ちます。腰を据えて何年も住むなら、家賃が割安になりやすい家具なしを選ぶ道もあります。これは契約の仕組みそのものが変わるので、表で整理します。
| 項目 | 家具付き(meublé) | 家具なし(vide / bail nu) |
|---|---|---|
| 契約期間 | 1年・自動更新が標準 | 2-3年・自動更新が標準 |
| 敷金 | 家賃の約1-2か月分が一般的 | 家賃の約1か月分が一般的 |
| 初期投資 | 少ない(家具・家電込み) | 多い(家具・家電を揃える) |
| 向いている人 | 移住直後・即入居したい家族 | 数年以上腰を据える家族 |
家具なしは2-3年、家具付きは1年が標準ですが、オーナーや不動産エージェントによっても変わります。移住直後は即入居できる家具付きを選ぶ家族が多いので、その場合はむしろ1年更新が基本になります。なお借主側は、いずれの契約でも所定の予告期間を置けば、いつでも解約して退去できます。
ステップ2|物件を探す
エリアと物件タイプが決まったら、いよいよ物件を探します。
主要なポータルサイト
現地でよく使われている賃貸サイトを挙げておきます。相場感をつかむためにも、渡航前から眺めておくと役立ちます。
SeLoger:掲載数が最も多い大手
Leboncoin:個人と業者が混在し掲載量が豊富で相場を見やすい
PAP(Particulier à Particulier):オーナー直接の物件が中心で仲介手数料が発生しにくい
LOKAVIZ:学生や若年層向けの住居を扱う公的サイト
なお、サイト上には実在しない「おとり物件」や前金をだまし取る詐欺も存在します。
内見前には送金しない、オーナーやエージェントの実在を確認する、相場より極端に安い物件は疑う、この三つは必ず守ってください。
オンライン内覧と通訳のコツ
内見は現地で行うのが理想ですが、渡航前はWhatsAppなどのビデオ通話で代替できます。わが家も日本にいる間にWhatsAppをつなぎ、フランス語ができる人にオンラインで同席してもらい、適宜通訳を介して質問しながら進めました。
オンライン内覧では、回線が切れやすいので時間に余裕を持つこと、間取りだけでなく水回りや収納、採光、周辺の音、携帯電波の入りまで映してもらうこと、可能なら昼と夜の雰囲気を確認することが大切です。
フランスは英語が通じない印象がありますが、不動産エージェントは英語ができる人が多い印象です。
内見でチェックしたい家族目線のポイント
家族で住む物件では、見落としがちな点がいくつかあります。
特に注意したいのが階数とエレベーターです。フランスでは地上階を0(rez-de-chaussée)と数えるため、表記上の「2階(2e étage)」は日本の3階に当たります。
古い建物にはエレベーターがないことも珍しくないので、ベビーカーや大きな荷物がある家庭は、表記の階数と実際に何段上り下りするのかを内見時に必ず確認しておくと安心です。
そのほか、子ども部屋や仕事部屋が確保できる部屋数か、騒音や採光が子どもの生活リズムに合うか、リモートワークに必要な光回線が引けるか、冬場の暖房方式と光熱費の見込みはどうか、といった点も見ておきたいところです。
ステップ3|申し込み・契約する
住みたい物件が見つかったら、書類を揃えて申し込み、契約に進みます。
必要な書類を揃える
個人で契約する場合に求められやすいのは、パスポート、ビザや滞在資格、収入証明、残高証明、雇用証明や法人関連の書類、納税証明、保証人関連の書類などです。契約成立後には引き落とし用の口座情報(RIB)も必要になります。
ただし、実際に何を求められるかはオーナーやエージェントによってかなり差があり、すべてが必須というわけではありません。
自営業などで収入証明が出しにくい場合でも、年間家賃分程度の残高証明で受け入れられるケースもあります。法人で契約する場合は別の書類が要りますが、これも扱いはエージェント次第なので、早めに確認しておくと慌てずに済みます。
保証人(garant)が必要なことも
私は求められたことがありませんが、賃貸契約で保証人を求められることもあるそうです。移住したばかりの家族には用意が難しいのが実情で、駐在目的以外の移住の場合「フランス在住の保証人を立てられる人」のほうが少数派です。
代替手段としてまず挙がるのが、国の無料家賃保証制度Visaleです。ただし主に30歳以下といった年齢・条件の制限があり、家族世帯では使えないことも多いので、「使える前提」で計画しないほうが安全です。ほかに、Garantmeなどの民間の有料保証会社を使う方法や、年間家賃分程度の残高証明・前払いで対応してくれるオーナーに当たる方法もあります。
契約内容を確認してから署名する
契約前には、家賃と共益費、敷金、契約期間、解約条件、家具・設備のリスト、保険、入居日を必ず確認します。疑問点は署名前にすべて質問しておきましょう。契約書は基本的にフランス語なので、通訳やAI翻訳を使い、内容を理解したうえで署名することが大切です。
ステップ4|入居する
契約が済んだら、入居の手続きとインフラの立ち上げに入ります。
入居時のétat des lieuxを記録する
入居のときには、必ずétat des lieux(現状確認書)を行います。
これは退去時に敷金が返ってくるかどうかの根拠になる、とても大事な手続きです。このとき撮っておく写真や動画が、後のトラブルを防ぐ最大の保険になります。
壁や床の傷・汚れ、水回り、電気やコンセント、暖房や給湯の作動、備え付けの家具や家電、受け取った鍵の本数まで、気になる箇所はすべて記録しておきましょう。
電気・水道・ネット・携帯を手配する
入居が決まったら、電気・水道・ガス・インターネットを早めに手配します。
電気・ガスは通常EDFで開通手続きをするのが一般的です。水道は物件や地域によって共益費に含まれることもあります。
インターネットはFreeやOrangeなどがあり、リモートワークをするなら光回線が引けるかを契約前に確認しておきたいところです。携帯はSIMやeSIMを早めに取得しておくと、現地での連絡がスムーズになります。わが家は携帯と自宅回線をFree(モバイルと光)、電気ガスをEDFで契約しました。
住宅保険(assurance habitation)に加入する
フランスでは賃貸入居時に住宅保険への加入が前提で、入居時に付保証明書の提示を求められます。火災や水漏れ、盗難などをカバーします。近年はオンラインで即日加入できる会社が増え、移住者にも使いやすくなっています。
| 会社 | URL | 特徴 |
|---|---|---|
| Luko(by Allianz Direct) | https://www.fr.luko.eu/ | デジタル保険大手。月払い・解約しやすい |
| Lovys | https://www.lovys.com/ | スマホで完結するデジタル保険 |
| Acheel | https://www.acheel.com/ | 2分程度で加入が完結する100%オンライン型 |
わが家はLukoを契約し、月22ユーロほどを払っていました。契約書はフランス語ですが、ChatGPTなどのAIに読み込ませて「何が補償され、何が対象外か」を把握しておくと安心です。
ステップ5|住み始めてから
入居がゴールではなく、暮らしはここから始まります。
トラブルが起きたときの対応
問題が起きたときの原則は、記録を残すことと、速やかにオーナーや連絡することです。
写真・動画・領収書・メールのやりとりをすべて保存し、不動産会社やオーナー、保険会社に早めに連絡します。
わが家も滞在中に火災による煙の被害にあい、一時的に別の住居へ移って清掃や保険請求を行ったことがあります。
詳細は伏せますが、このとき本当に助かったのは、保険に入っていたことと、被害状況をすぐ写真と動画で記録していたことでした。やりとりはすべてメールとメッセージで残し、後から経緯を示せるようにしておいたのも役立ちました。
AIを通訳器として使う
フランス語や英語に不安がある場合、ChatGPTなどのAI画面を常に開いておき、リアルタイムの翻訳役として使う方法が役立ちます。
自分の言いたいことをフランス語に訳して相手に見せ、相手の発言を吹き込んで日本語に訳す、という双方向の通訳器として使えます。単純な機械翻訳だと不自然な訳になりがちですが、AIなら文脈を踏まえて整えてくれますし、やりとりのログが残るのも利点です。契約書の読み込み、保険会社へのメール、学校への連絡文の下書きまで、家探しのほぼ全工程で活用できます。
もし渡航前に物件が決まらなかったら
出国までに本契約が決まらないことは珍しくありません。
その場合は、AirbnbやBooking.comで2週間ほど短期のアパートを借りて拠点にし、その住所を起点に現地で物件を探すのが現実的です。現地に着いてからエージェントを回り、内見と交渉を重ねて本契約に進みます。
地域によりますが、エクス=アン=プロヴァンスは不動産屋が多く、選択肢は比較的豊富な印象でした。良い物件が見つかれば現地での契約は早く進むこともあり、内見した翌日に入金して住み始めたという人もいます。ただし、このスピード感はオーナーや物件次第で保証できるものではありません。また、短期滞在先の住所が住所証明として使えるかは、事前に確認しておいてください。
フランスのビザ申請時には現地の住所証明が必要となります。3ヶ月以上の滞在予定がわかるものがあればいいので、住所が決まらない人は先にAirBnBを長期予約、その住所と契約書でビザ申請を行う人も多いです。子どもがいる場合はその住所周辺にある学校に登録(市のポータルサイトに登録して手続きをします)することになりますが、ビザ申請時の住所にすむ必要はないので、現地で住所が決まったら改めて学校登録をしなおす流れが良いと思います。
わが家のモデル(参考)
参考までに、わが家のケースを一例だけ挙げます。あくまで一家庭の例で、地域や時期、物件によって大きく変わります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 地域 | エクス=アン=プロヴァンス(旧市街) |
| 物件 | 家具付きT3、家賃 月1,880€ |
| 車 | なし(学校・マーケット・スーパー・薬局はすべて徒歩圏) |
| 学校 | 公立小学校 |
| 住宅保険・通信 | 保険:Luko(月22€程度) 通信:Free(携帯+自宅用光回線) 電気ガス:EDF 水道:共益費に含まれる |
家賃は、旧市街の中心地だったのでこの価格ですが、少し離れれば1500€以内の部屋も見つかりました。逆に、主に外国人向けの短期賃貸(AirBnBなど)は月3000-5000€程度の物件が多い印象です。
バスで10分くらいに1000€以内で暮らせるエリアもあるのですが、イスラム系移民の比率が一気に上がり旧市街とは雰囲気も変わります。フランスは暮らすエリアによって雰囲気も街並みも、そこで暮らす家族も、学校のクラスメイトや人種も大きく変わることは知っておきましょう。
よくある質問
保証人がいないと借りられませんか?
必須とは限りません。Visale(条件あり)や民間保証会社、残高証明・前払いといった代替手段があります。最終的にはオーナー次第なので、複数の手段を準備しておくと安心です。
契約期間は何年ですか?
家具なしは3年・自動更新、家具付きは1年・自動更新が標準と言われています。移住直後は家具付きを選ぶ家族が多いため、1年更新が基本になることが多くなります。
渡航前に契約を決めるべきですか?
理想は決めておくことですが、決まらなくても短期滞在を拠点に現地で探せます。ビザ申請は移住の数ヶ月前から動き始める必要がありますし、そのタイミングで住居が決まっている家族のほうが少ないと思います。現実的な流れとしては、まずはAirBnBを3ヶ月以上予約(キャンセル規定は必ず確認)したり、フランスに友人がいれば住所を貸してもらうなど工夫してビザ申請を乗り切り、そこから本腰をいれて住居を探すという流れでも良いと思います。
フランス語ができなくてで契約できますか?
不動産会社は外国人対応も慣れているので、必要書類を揃えることができれば外国人でも物件は借りることができる印象です。書類や契約書はフランス語になるので、AI翻訳を活用したり、不安であれば通訳を用意する必要があります。うちはChatGPTに契約書類を読み込ませて、不安点があればメールで問い合わせて確認。契約書内で借り手が不利になる項目がないかどうかなど確認の上署名することをしていました。
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免責:本記事の金額や制度、契約条件は目安です。家賃・敷金・保証制度・保険料・契約期間の扱いは、地域・時期・物件・オーナーによって変動します。Visaleなどの公的制度の条件も変わることがあります。正式に契約・予算化する際は、最新の公式情報、在日フランス大使館、現地の不動産会社や市役所で必ず確認してください。