これはまだ、僕が大阪あいりん地区にいたときのことです。
僕はそのとき携帯サイトのアフィリエイトに取り組んでいたのですが、最初に成果があがったのが、「着うた」のサイトでした。(今ではすっかり「死語」になりつつあるワードですね)
無料登録で1件315円。単価は安いですが、それでもはじめて報酬があがったときの感動は忘れられません。
僕は毎日、日本橋にあるCDショップに出かけていき、新曲を視聴してレビューを書いたり、数カ月先にリリースされるすべての楽曲リストを調べてきて、そのすべての記事を書いたりしていました。1ヶ月に発売される楽曲は約300〜400曲。どの曲が人気になるかわからないので、そのすべてを網羅していくやり方です。
そうして数ヶ月が過ぎる頃には、着うた関係のサイトだけで2000サイトほどになりました。
なんとか食べていけるだけの報酬を得る、が、、、
そのときの報酬はだいたい7万円くらい。
僕の1ヶ月の生活費が7万円ほど。だから、この着うたサイトを作り続けていけば、なんとか食いつなぐことができる計算です。
常に新曲を追いかけていかなければ報酬が下がっていくことはデメリットでしたが、それでも「この方法で食いつなげる」というスキームが見つかったことは、食うのに困っていた僕にとって、光が差し込んだ瞬間です。
12月のある日、ASPの報酬画面を見ると、ガクンと報酬が落ち込んでいることに気が付きます。
これまでは日給2-3000円は出ていた報酬画面が、数百円で止まっている。1日平均300あった広告クリックも、20くらいになっていました。
パニックになって原因を探すと、僕がメインで使っていた着うたの広告が、予告もなく、突然終了していました。
「これはきっと見間違いに違いない……」
一度ASPをログアウトして、もう一度、ログインをしなおします。きっとこれは僕のアカウントの画面ではないのだ。そうに違いない。報酬画面は変わらず、広告は停止されていました。
2000サイトに使っていた、メインの広告が突然終了する。まるで、僕の人生にも終止符を打たれたような気分になり、目の前がちかちかして真っ暗になりました。
これまで蓄積された疲労が一気に吹き出し、頭がショートし、そのまま気絶するようにせんべい布団に倒れこんだことを覚えています。
2000サイトを集成する、決意を固める。
翌日も、報酬画面はそのままでした。
「見間違いではなかった……」
絶望的な気分で、PCの前でふさぎ込む。
しかし、僕にできることはひとつしかありません。このジャンルがふっ飛べば、今の僕には収益をあげる目処は経っていないからです。
2000サイトの広告を、すべて、張り替えよう。
くらくらした頭で、そう決意しました。
アフィリエイトのシンプルなところは、すべての責任を自分が負っているということです。
やるもやらないも自由。そして、どこまで報酬を伸ばしていくかも、自分で自由に決めることができます。もちろん、成果があがらなければ0円。行動を起こさなければ明日にも食うに困る。でも、数カ月後には爆発する可能性もある。いい意味でも、悪い意味でも、そのシンプルさには清々しさを感じるほどです。
このまま手を動かさなければ、報酬は発生しない。でも手を動かせば、1円でもあがる可能性がある。
僕はエクセルファイルにまとめてある無数のサイトURLに向き合い、その、すべてのログイン画面にアクセスしはじめました。
2000サイトの修正も、たったの800分しかかからない。
管理画面にログインし、記事の編集画面へ、そして終了した広告タグを新しいタグにコピペで置き換える。それができたら更新し、次のサイトへ。これを延々と繰り返します。
それは正直、指とマウスを持つ手首が壊れそうになるほどの付加でしたが、それでもやってみると、意外と早く作業が進むことに気が付きました。
時間を計測してみると、100サイトあたり40分で修正が終わります。
2000サイトを集成するのに800分=15時間の計算。これをもっと作業速度を早めて100サイト30分でできるようになれば、12時間で終わる。この事実は、すっかり叩き潰されていた勇気を呼び起こすのに十分な事実です。
2000サイトの集成というと途方もない時間がかかるように思うけど、実際にはたったの800分しかかからない。それに、頭をつかう必要もなく、手を動かし続ければ集成はすぐ終わる。
これなら、できる。
僕は動画サイトで全24話のアニメを探してきて、その画面を縮小してPCの左端に設置すると、それを視野に置きながら、猛烈な勢いで修正をはじめました。全24話×1話25分=600分。これがすべて見終わる頃までに終わらせようと。
そうして心を殺し、作業に没頭し、手を動かし続けていった結果、最終的には100サイト25分くらいで修正ができるようになり、24話に達成する前にすべての修正が完了していました。
僕は信じられない面持ちで、まだ物語の終盤にさしかかったばかりの画面を眺めながら、「やれば、できるのだ」と、人間が持つ可能性のタフさにガッツポーズをしました。
無理だと思っているものも、実は1日で終わるものかもしれない。
実は無理だと思っているものも、冷静になって時間を計測すれば、意外と短時間で終わることかもしれない。僕はこのエピソードを通じて、そんなことを学びました。
「こんな作業は無理だ」「こんなことは自分にはできない」そんな声をよく聞きます。
しかし、本当に無理なの?と聞いてみると、その検証はしていなかったり、実際には取り組んでもいないことが往々にしてあります。まずは取り組んでみて、自分がどれだけできるのか、冷静に計測してみましょう。意外と、あなたが持っている可能性は、それを軽々と超える力を持っているかもしれません。