昔、起業をしたばかりの頃。名古屋で、資産家の臼山さん(仮名)という方とお話をしたことがあります。
臼山さんは、まだ30代半ば。若くして事業を興し、売却。そこで売り上げた収益を投資に回し、今は世界各地を視察で周りながら、海外の不動産やスタートアップに投資をしていると話していました。
僕はこれまでお金について語る機会があるとき、たとえば「このサイトで200万作りたい」「月30万は欲しい」というように話していました。
このときも、話の流れで「阪口くんは、どれくらい稼ぎたいと思っているの?」と聞かれたので、特に何も考えずに「月に100万は稼げる力が欲しいです」と答えました。
臼山さんは僕の言葉をふんふんと聞いた後、ちょっと、気になったことがあるというような素振りで、
「阪口くん、あのね、お金の話をするときは単位をつけよう」
僕はまったく、思ってもみない言葉が返ってきたので、一瞬えっと固まってしまいました。
お金の話をするときは、通貨単位をつける。
「その様子だと無意識みたいだね」
臼山さんは、ニヤリ、と笑いながら、
「あのね、お金ってのは数字と単位がセットなんだ。100万といったって、それが円なのか、ドルなのか、タイバーツなのか、ルピアなのかで全然違う意味になる。阪口くんが言った100万というのは、それは円、それともルピア?」
「は、はい、円のことです(ルピアって、、、どこの通貨だ?)」
「もし言っているのが100万ルピアだったら、もう阪口くんは稼いでるよ。100万ルピアで1万円くらいだからね! それくらいは稼いでいるだろう?」
「は、はい、もちろんです」
「だからね、お金の話をするときは必ず単位を入れて話をしよう。細かいことかもしれないけれど、これはすごく大事なことなんだ。もし阪口くんが海外で、いろんな国の人を交えながら話をしたとするよね。そのときに、『僕は100万を稼ぎたくて』とだけ伝えたら、『それはどこの通貨だい?』って聞かれると思わない?」
「そうですね……」
「100万ドルであれば、1億円だし、100万ユーロであれば1億3000万円になる。でも、ルピアだったら1万円にしかならない。僕の知っている限り、常に他の通貨と触れ合う習慣を持っている人は、必ず通貨に単位をつけて話しているよ。そうしないと、正確に情報を伝えることができないから」
「僕はこれまで、あまりそうしたことを意識したことがありませんでした」
「じゃあ、これからは気をつけるようにしよう。それに、単位をつけないと、自分が意図しない他の国の通貨を引き寄せてしまっているかもしれないよ?」
神様は都合よく「円」を選んでくれるとは限らない。
「引き寄せ、ですか?」
「そう。思考は現実化するってよく言うだろう。あれは本当のことでね、頭の中で強く強くイメージできたものは現実に引き寄せられるようになっているんだ」
「もし『月100万欲しい、100万欲しい』って毎日願い続けて、どんなにどんなにがんばっても、月に1万円にしかならなかったとするよね。でもそれは、叶わなかったのではなくて、違う通貨単位で引き寄せられていて、すでに叶っているかもしれないんだ」
「ルピアとかで、ですか」
「そう。ルピアとか、ドンとか、キップとかね。引き寄せたものをその通りに分配してくれる、神様のような存在がいるして、きっと、その神様も混乱してるんじゃないかな。『こいつは100万、100万とうるさいが、一体どこの国の通貨なんじゃろ』『とりあえずルピアにでもしておくか』ってね。神様は都合よく円を選んでくれるとは限らないから」
「僕は違う通貨単位を引き寄せてしまっているのかもしれません」
「そう。だからこれからはちゃんと『月100万円が欲しい』と思うこと。お金について願うときには、必ず単位をつけるようにしよう。だから、阪口くんも、ちゃんと『月100万円稼ぎたい』って言うの。言ってみて」
「月100万円稼ぎたい、です」
「そう。よくできたね」
臼山さんは優しげに微笑んだ。
あなたが引き寄せているのは日本円ですか?
それからは臼山さんの言いつけ通り、お金のことを考えるときは、単位をつけて考えるようになりました。
100万ではなく100万円、300万ではなく300万円。そうして意識してみると、たしかにこれまで自分は、「円」という通貨でしか、お金を考えていなかったことに気が付きました。
あなたは、お金の話をするときはちゃんと単位をつけていますか?
お金が欲しいと願っていても、なかなかそれが叶っていないなら、もしかしたらそれは、違う通貨単位のお金を引き寄せてしまっているせいかもしれません。