たとえ英語がある程度わかっても、「その場で何を聞かれるか」という事前知識がなければ、コミュニケーションを取れないことが多くあります。
僕は今は英語はある程度喋ることができますが、この「事前知識」がないせいで、何度もちぐはぐなコミュニケーションをすることになってしまいました。
レストランにて紅茶を注文する時、、、
たとえばレストランにて。
食事が終わった後、僕は温かいストレートの紅茶が飲みたかったので「Hot tea」と伝えました。
しかしウエイターは、それをメモするのではなく、いろいろと言ってきます。
僕は、まさか「Hot tea」と伝えるだけで注文は終わると思っていたので、彼が何を言っているのかわからず、ひたすらに発音を変えながら「Hot tea」と伝えることしかできませんでした。
「Hot teaなんてよく聞かれるはずなのに、どうしてわからないんだろう?」と、訝しく思ったほどです。
彼はちょっと困ったようにメモをして、結局、ふつうの紅茶を出してくれました。
Black tea or Green tea?
今考えてみると、彼はきっと、
「Black tea or green tea?」
と聞いてきただけだったのだと思います。
“Black tea”というのがふつうの紅茶で、”Green tea”が緑茶です。その時僕は、「Tea」といえばふつうの紅茶が出てくると思い、”Black tea”という単語を知りませんでした。
”Black tea”を選ぶと、次に聞かれるのが紅茶の種類です。
* アールグレイ
* ブレックファースト
* ダージリン
などですね。
きっとこれも聞かれていたと思うのですが、「茶葉の種類を選べる」ということを知らなかった僕は、やっぱり聴き取ることができませんでした。
逆に、妻はこうした事前知識があるので、僕よりも英語ができないにも関わらず、店員とふつうにコミュニケーションをしています。
店員「アールグレイ、ブレックファースト、ダージリン……どれになさいますか?」
妻「ハーブティはありますか?」
店員「ありますよ。ジャスミンとカモミール、それに……」
妻「じゃあ、カモミールで」
店員「かしこまりました」
妻「はちみつはありますか?」
店員「はい、ご用意しております」
みたいな会話ですね。
僕はにとっては、カモミールを頼めることも、砂糖の変わりに「はちみつ」という選択肢があることも知らなかったので、目からうろこの会話です。
「紅茶には選択肢がある」ということを覚えては、落ち着いて紅茶を注文できるようになりましたが、
紅茶ひとつを頼むにもルールがあり、事前に知っておかなければならないことがあるんだなあと、とても勉強になった経験でした。
事前知識がなければ、会話をすることができない場面がある。
英語ができなくても、次に何を聞かれるかという事前知識があれば、ある程度対応することができます。
逆に、事前知識がなければ、たとえ言葉がわかっても会話をすることができません。
これは、僕の外国語学習にとって、とても新鮮な気付きでした。
これは教科書に書いてあるものではなく、やはり恥をかきながら、戸惑いながら、実地で覚えていくしかないのだと思います。
朝食に卵を頼んだら、焼き方を聞かれる。
オムレツを頼んだら、中にどんな具材を混ぜるかを聞かれる。
エッグベネディクトを頼めば、中に何を挟むかを聞かれるし、ついでにアレルギーを聞かれる。
こうした事前知識を、その場その場で仕入れていくこと、そして自分のなかの経験値を高めていくことで、だんだん世界での生きやすさのレベルが上がっていくように感じるのです。
僕は海外で仕事をするようになって3年が経ちますが、世界には、まだまだ知らないものであふれています。
1週間に数回くらいは、こうした恥をかく場面に遭遇しています。
これから何年も経って、何十回、何百回も恥をかくころには、どんな場面でも物おじしない事前知識の山のようなものが、自分の中にできあがるのかもしれません。そのときを楽しみに、恥を書き続けていきたいと思います。