7日目:岩木山を経由して津軽西海岸を抜け、十二湖へ。

  • 岩木山を経由して津軽西海岸を抜け十二湖へ。
  • ガソリンスタンドでガソリンの蓋を置いて来る。来た道を戻ることに。
  • 日本海を初めて目の当たりにする。
  • 道の駅ふかうらで宿を取る。

道の駅ひろさきで起きたのが6時。

素敵な女の子といちゃいちゃできる素晴らしい夢を見た。気の強そうな双眸の、顔立ちのハッキリとした黒髪の女の子だった。旅に出てからというものの、こうした素敵な夢を見る機会が多くなった。

冷たい雨が降っていた。そういえば夜中、大粒の雨が車体を叩いて目覚めた記憶がある。外に出るのがおっくうなほど空気が凍り付いている。

ジャンバーを着て、ジーンズの下にタイツをはいたがそれでも寒い。寒いといってもまだ10度ほどである。この先が思いやられる。この時期から徒歩で縦断など、やらなくてよかった。

朝飯はラーメンにする。今思うと、たとえ時間がかかっても、米を炊いた方が充実感がある。飯の充実感は旅の充実感に繋がる。

飯をないがしろにすると、常に欠乏感がつきまとう。どんな良い景色を見ても、何か物足りない。身体の内側に欠乏感を抱えていたのでは、いくら外側に素晴らしいものがあっても、素直に受け止めることができないように思う、

岩木山へ向かう道の両側は、林檎の木で埋め尽くされていた。

「岩木山アップルロード」と呼ばれている。最初、自分はそれが林檎だと気がつかなかった。それはまだ未熟で、桃やざくろのような淡いピンク色をしていた。

実は見るからに柔らかく、脆そうだった。実際に触っていないからなんとも言えないが、自分の知った林檎の姿とあまりにギャップがあったため、弘前が青森一の林檎の産地だと知っていても、それが林檎の木と結びつかなかったのだ。

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遠目で見る岩木山は、棟方志功の板画のようだった。

天気は雨。幾重にもなった分厚い雲が空一面を覆っていた。その灰色を背景にして、富士型のシルエットがびろウドに塗りつぶされていた。その輪郭は、棟方の彫刻刀で削り取られたように力強く、直線的で、大胆だった。

岩木山神社の踊る狛犬は、可愛らしく、不気味であった。

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各地域の狛犬の顔つきを分析した狛犬学という学問もあるような気がする。

神社を抜けると急に日が射した。びろうどに包まれていた岩木山が色彩を露にした。山頂から麓まで、いくつかの段階に分かれて紅葉に染まっていた。背景は灰色からコバルトの空へ変わった。澄み切った青森の空だ。

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青森の道を走っていると風景に吸い込まれそうになる。ぶつかりそうになる不注意を何度叱咤したことか。美しいものに出会う度に停車していたらいつまで経っても目的地に辿り着けない。そうゆう場面に数限りなく出会う。結局、1週間も青森にいるが、一度として飽きることがない。

本当に感動し圧倒されるものは、人の手が届かない、人の手では作ることができない、純自然的なものであった。

日本海の雄大さ!木々からこぼれ落ちる鮮やかな木漏れ日!湖に映ったコバルトの空模様!浄土のように霧に包まれた山々!少し車を走らせるだけで素晴らしいものにたくさん出会えた。これは自分の人生の一大事である。

 

走り続け、カーブを曲がると、日本海が右手に広がった。飛び上がるほど感激した。

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海というのは、ただそこに広がっているだけで、一人の人間を感動させるのである。これはすごいことだ。

憧れの日本海は、まさしく「海」と呼ぶにふさわしい青さと、広さと、穏やかさを持って堂々と地平線に伸びていた。

カモメが二羽飛んでいた。牧歌的な、歌に歌われたそのままの、素晴らしい展望だった。海岸線を走らせながら常に意識は右側にあった。日本海を眺めながら昼飯を食い、人生を考えた。

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白神山地の「十二湖」を観にいく。

ここには青いインクを流したような美しい「青池」があると聞いていた。しかし、途中で雨が降り、最後には走る始末。太陽の照らす時間帯に青池を覗き込みたかった。きっと素敵だったろう。

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弘前駅で見かけた女性の旅人をここでまた見かけた。赤いバックパックに一眼レフ、折りたたみ式の小さな自転車。

五能線に乗ってここまで来たのだろう。あの小さな自転車は便利そうだ。なるほどそうゆう移動手段もあるのかと感心。向こうは僕のことを知らないだろうが、僕は独り嬉しかった。もし秋田で見かけたら声をかけてみたい。隣に乗ってくれるだろうか、

BGMで流しているStecy Kentの歌声が素晴らしい。五臓六腑に染み渡る、それは救いの声だった。

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