小説– category –
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小説
楽園の柱
1 ごおんごおぉんごおぉぉん……と丘の上の時計台が鳴りました。 水車小屋の裏を流れる小川の淵で、夢の羊とたわむれていた少年は、くるりと丘の時計台を振りむいて時計盤を確認しました。時計版の目盛りは全部で9時までしかなく、その短針が8時をまっす... -
小説
生活と花
扉をあけると、一輪の薔薇とともに、逆光を背負った彼女があった。玄関に招き入れると、小ぶりな薔薇の純白が、彼女の穏やかな表情とともにぼうっと浮かび上がった。 「これ、活けようと思うの」 彼女の声は明るく弾んでいた。その明るい調子は、倦怠に満... -
小説
無糖の王様
渡されたのはひとつだけ。それでは甘味が足りなかった。 席を立ってカウンターに詰め寄ってバケットに手を突っ込む。3つ。喫茶店の赤いロゴマークが真ん中に小さくプリントされている、オリジナルの砂糖。僕はこの柄が好きだ。映えない生活の中で数少ない... -
小説
アイスコーヒー、宇宙へ。
アイスコーヒーを、飲むとしますよね。カフェラテとかカプチーノじゃ駄目です。アイスコーヒーを選びましょう。 ガム・シロップとミルクを入れてよく書き混ぜて、よおおく混ぜて、適当に飲みながら、本を読んだりタバコ吸ったり書き物をしたり、ほうってお...
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